看護学?リハビリテーション学研究

看護学?リハビリテーション学研究からのアプローチ

子どもたちの行動や表情の観察から始まる 発達支援のための学び

野間 沙花 助手
医療福祉学部 リハビリテーション学科 作業療法学専攻
野間 沙花 助手

東北文化学園大学では、2008年5月、地域の発達障害児と家族を支援することを目的に、作業療法分野の教育研究の場として「発達支援教室」開設。学内のこうした施設は全国的に見ても貴重な存在です。子どもが大好きで保育士の老虎机游戏も持つ野間先生は、ここで発達障害を持つ子どもたちの行動や表情を見つめながら、生活動作や学習などの発達支援を実践。保護者へ発達障害への理解を促し、子どもとの向き合い方を保護者とともに考える機会も作っています。

学内に設けられた「発達支援教室」の役割とは?

「発達支援教室」では、作業療法士の老虎机游戏をもった専門教員が発達障害を持つ子どもや保護者それぞれのニーズに応じた支援を提供しています。
事前の見学や説明、面談などを行った後、発達障害児と保護者は約60分間、教室内にたくさん用意された遊具を使って運動したり遊んだり自由に過ごしてもらいます。その様子を専門教員がつぶさに観察し、発達状況を確認するのが出発点になります。保護者からの相談で多いのが「着替えが上手にできない」や「トイレでいつも失敗してしまう」など、普段の生活における悩み。
「遊んでいるだけのように見えますが、無理やり作業を強制しないことを第一にしています。無理強いしてしまうと、お子さんが嫌になって行動しなくなってしまいますから。何か課題に取り組む前に、できるだけ楽しくこの教室で過ごしてもらうことを心掛けています」と野間先生。そのため、この教室には子どもの笑い声が絶えず響き、また来たいとねだる子どもが多いのだそうです。



大学内に設けられた「発達支援教室」

言葉にならない子どもたちの思いを受け止めるために

この教室が対象としているのは身体的な障害ではなく、自閉スペクトラム症や学習症(LD)、注意欠如多動症(ADHD)などの発達障害を持つ子どもで、最年少は2歳の幼児から受け入れています。研究目的の施設であるため、専門医師による「発達障害」との診断が必要となります。会話によるコミュニケーションが難しい小さな子どもも多く、野間先生は「言語が未発達な幼児と意思疎通を図る難しさはありますが、遊びを通して喜びを共有し、ちょっとした表情の変化を見逃さないように『もう1回やりたそうだな、手を伸ばしたいな』といった小さな感情の揺れをキャッチすることが、子どもを対象にした作業療法士の本分だと考えています。そして、言葉にならない子どもの思いを翻訳して、両親に伝えることも大切な仕事だと考えています」と語ります。

教室で得た研究成果を家庭での支援へ

「発達支援教室」は、発達障害児への支援をテーマに据える野間先生にとって、自身の研究に取り組む実践の現場にもなっています。「子どもとの関わりの中で『うまくいったこと、うまくいかなかったこと』を振り返り、『どうしてうまくいったのか、変化がなかったのはどうしてなのか』を考えます。その試行錯誤をレポートにまとめ、同様の相談があった際、以前効果のあった方法を提案し、子どもの特性に合わせた練習や訓練の方法を考えていきます」。その一例として、同じリハビリテーション学科の本多ふく代教授と共同で研究に取り組んだ「排便を立位から座位で行えるようになり自立につながった一事例:座位での排便に成功した要因の分析」があります。排便に課題を持つ5歳児と保護者が、「就学前に座位での排便が行えるようになりたい」という相談を持ちかけたことが研究のきっかけになりました。
「発達障害を持つ子どもが、少しでも生活しやすくなるようなちょっとした手助けができればと思っています。研究の成果を学会や論文で発表することで、同じような問題で困っている発達障害児と保護者に、改善が見込める可能性があるのだと知ってほしい。発達支援教室で直接対面することができなくても、そのような方法で手助けができればと考えています」と話します。


作業療法士の学びを体験から得られる教室

発達障害児の支援や研究だけでなく、作業療法学を専攻する学生たちが学ぶ機会も創出しています。
「授業の無い空き時間の学生に、直接支援の様子を見てもらったり、手伝ってもらっています。現場で子どもを対象にした作業療法士はとても少なく、割合でいうと作業療法士100人のうち2、3人くらい。そのため、この分野を志望する学生の実習機会も限られています。それを補う上でも発達支援教室が貴重な学びの場になっています」と野間先生。さらに、卒業生の受け入れも行っており、成人のリハビリ専門から発達障害児の支援に転向したいと望む現役の作業療法士が、一から学ぶために相談に訪れているそうです。「実習という形式ではなくとも、子どもとの交流を通して作業療法士としての関わり方や検査方法、保護者への対応の仕方を体験で学んでもらっています」と、作業療法士の学びを支える姿勢について教えてくれました。


この教室で学生が子どもの支援に関わる意義を語る野間先生

観察の視野を広げて子どもが頑張る姿を応援

野間先生は、「発達支援教室」以外でも、自身の学びを発信してきました。
本学の系列である幼稚園型認定こども園の「友愛幼稚園」に約5年間(月に1、2回)訪問し、先生たちが気になっている園児の様子を見たり、クラス運営のアドバイスを行ったりしていました。「作業療法士は子どもの資質だけではなく、その作業や環境も観察の対象にしています。子どもの能力や気質にばかり目がいきがちですが、環境と課題がうまくマッチングしているかを考えるべきです。保育士の先生たちとはちょっと違った視点で、いつも座る席や普段使っている道具などを変えるなど、改善に結びつくようアドバイスしてきました」と話します。そして、発達障害児に関わる家族や先生に対して野間先生は、「発達障害児が他の子どもと違って何かをできないことに悩みがちですが、実はその子なりに頑張って目的にたどりつこうとしているかもしれません。すぐに批判的にならず、そばで寄り添いながら応援するような関わり方で、子どもたちと接してほしいと願っています」。



東北文化学園大学広報チャンネル「作業療法学専攻 発達支援教室の取り組み」に出演

https://www.youtube.com/watch?v=8t-M-0mmRAc